高校数学[総目次]
数学Ⅱ 第4章 三角関数
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1. 一般角と弧度法 | [無料] | |
2. 一般角の三角関数 | [無料] | |
3. 三角関数の性質 | [無料] | |
4. 三角関数のグラフ | [会員] | |
5. 三角関数の加法定理 | [会員] | |
6. 三角関数の種々の公式 | [会員] | |
7. 三角関数の合成 | [会員] | |
8. 三角関数の応用 | [会員] |
7.0 三角関数の合成とは
三角関数の合成とは何か
三角関数の合成公式と呼ばれるものがある.$\sin$ と $\cos$ の1次式を $\sin$ だけ,あるいは $\cos$ だけで書き表すもので,これは要するに $\sin$,$\cos$ の加法定理 で,右辺から左辺への書き換えのことである.例えば sin の加法定理である
\[\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta\]
という式について,左辺と右辺を入れ替えた
\[\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta=\sin(\alpha+\beta)\]
が三角関数の sin による合成公式であると,大雑把に言うことができる.
7.1 sin での合成
$a\sin\theta+b\cos\theta$ を sin だけの式にする
$\sin$ の加法定理 である \[\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta\] において,右辺から左辺に書き換えるのが $\sin$ での合成である.
例 $\sqrt3\sin\theta+\cos\theta=\mbox{□}\sin(\theta+\triangle)$
この左辺を変形して,右辺のように $\sin$ だけの式を導こう.それには □ と △ の情報が必要である.□ と △ の値を得るために,以下のような変形を行う.
\[\begin{align*} (\mbox{左辺})&=\sqrt{(\sqrt3)^2+1^2}\left(\sin\theta\cdot\frac{\sqrt3}2+\cos\theta\cdot\frac12\right)\\[5pt] &=\sqrt{3+1}\left(\underline{\sin\theta\cdot\cos\frac\pi6+\cos\theta\cdot\sin\frac\pi6}\right)\\[5pt] &=2\,\underline{\sin\left(\theta+\frac\pi6\right)} \end{align*}\]
※ の部分で $\sin$ の加法定理を用いた.
一般に \[\begin{align*} a\,&\sin\theta\!+\!b\cos\theta\\[5pt] &=\sqrt{a^2\!+\!b^2}\left(\!\sin\theta\!\cdot\!\frac a{\sqrt{a^2\!+\!b^2}}\!+\!\cos\theta\!\cdot\!\frac b{\sqrt{a^2\!+\!b^2}}\!\right)\\[5pt] &=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha) \end{align*}\] ただし $\alpha$ は,
\[\sin\alpha=\frac b{\sqrt{a^2+b^2}},\ \cos\alpha=\frac a{\sqrt{a^2+b^2}}\]
となる角である.
三角関数のsinでの合成公式\begin{gather*} a\sin\theta+b\cos\theta=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha)\\[5pt] \mbox{ただし},\ \sin\alpha=\frac b{\sqrt{a^2+b^2}},\ \cos\alpha=\frac a{\sqrt{a^2+b^2}}\end{gather*}
覚え方
座標平面上に,$\sin$ の係数を $x$ 座標に,$\cos$ の係数を $y$ 座標にもつ点 $(a,b)$ をとり,原点Oと結ぶ.この線分の長さ(図の□)が合成したときの $\sin$ の係数であり,線分と $x$ 軸の正の向きとのなす角(図の△)が合成したときに用いる角である.
三角関数の合成ができる型
さて,三角関数が合成できる形は $a,b$ を実数の定数として
\[a\sin\theta+b\cos\theta\]
であって,
三角関数の合成ができる型
- $\sin,\cos$ の1次式.
- $\sin,\cos$ の中身 (ここでは $\theta$ とする) は同じ.
- $\sin,\cos$ の係数 $a,b$ は同じ数である必要なし.
- $\sin,\cos$ の係数 $a,b$ は正負いかなる数でもよい.
というのが特徴である.
例題 次の式を $r\sin(\theta+\alpha)$ の形に変形せよ.ただし,$r>0$,$-\pi<\alpha<\pi$ とする.
(1) $-\sqrt3\sin\theta+\cos\theta$
(2) $-\sqrt3\sin\theta-\cos\theta$
(3) $\sqrt3\sin\theta-\cos\theta$
7.2 cos での合成
$a\sin\theta+b\cos\theta$ を cos だけの式にする
$\sin$ で合成したものと同じ式である $a\sin\theta+b\cos\theta$ を,今度は $\cos$ で合成してみよう.
$\cos$ の加法定理 である \[\cos(\alpha-\beta)=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta\] において,右辺から左辺に書き換えるのが $\cos$ での合成である.
例 $\sqrt3\sin\theta+\cos\theta=\mbox{□}\cos(\theta-\triangle)$
\[\begin{align*} (\mbox{左辺})&=\cos\theta+\sqrt3\sin\theta\\[5pt] &=\sqrt{1^2+(\sqrt3)^2}\left(\cos\theta\cdot\frac12+\sin\theta\cdot\frac{\sqrt3}2\right)\\[5pt] &=\sqrt{1+3}\left(\underline{\cos\theta\cdot\cos\frac\pi3+\sin\theta\cdot\sin\frac\pi3}\right)\\[5pt] &=2\,\underline{\cos\left(\theta-\frac\pi3\right)} \end{align*}\] ※ の部分で $\cos$ の加法定理を用いた.
一般に \[\begin{align*} a\,&\sin\theta\!+\!b\cos\theta\\[5pt] &=b\cos\theta+a\sin\theta\\[5pt] &=\sqrt{b^2\!+\!a^2}\left(\!\cos\theta\!\cdot\!\frac b{\sqrt{a^2\!+\!b^2}}\!+\!\sin\theta\!\cdot\!\frac a{\sqrt{a^2\!+\!b^2}}\!\right)\\[5pt] &=\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta-\beta) \end{align*}\] ただし $\beta$ は, \[\cos\beta=\frac b{\sqrt{a^2+b^2}},\ \sin\beta=\frac a{\sqrt{a^2+b^2}}\] となる角である.
三角関数のcosでの合成公式\begin{gather*} a\sin\theta+b\cos\theta=\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta-\beta)\\[5pt] \mbox{ただし},\ \sin\beta=\frac a{\sqrt{a^2+b^2}}, \cos\beta=\frac b{\sqrt{a^2+b^2}}\end{gather*}
覚え方
座標平面上に,$\cos$ の係数を $x$ 座標に,$\sin$ の係数を $y$ 座標にもつ点 $(b,a)$ をとり,原点Oと結ぶ.この線分の長さ(図の□)が合成したときの $\cos$ の係数であり,線分と $x$ 軸の正の向きとのなす角(図の△)が合成したときに用いる角である.
注意
sin での合成と異なり,cosでの合成では
\[\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta\color{red}{\boldsymbol{-}}\beta)\]
と cos の中身を「マイナス」にして,上図の△の角を引かなければならない.これは cos の合成公式が,cos の加法定理である
\[\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta=\cos(\alpha\color{red}{\boldsymbol{-}}\beta)\]
を根拠に導かれたことによっている.この式の右辺の「マイナス」がそれを指す.
例題 次の式を $r\cos(\theta-\alpha)$ の形に変形せよ.ただし,$r>0$,$-\pi<\alpha<\pi$ とする.
(1) $-\sqrt3\sin\theta+\cos\theta$
(2) $-\sqrt3\sin\theta-\cos\theta$
(3) $\sqrt3\sin\theta-\cos\theta$
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