点Oを極とする極座標表示で表された曲線上の点をPとするとき,線分OPの通過領域の面積を求める際に,強力な威力を発揮するのが扇型分割による積分です.ここではこの積分公式の証明を行います.
高校数学[総目次]
高校数学ワンポイント
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1. ファクシミリの原理 | [会員] | |
2. バウムクーヘン分割 | [会員] | |
3. 円と放物線 | ||
4. 垂線の長さ | ||
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6. 関数の連続性は導関数に遺伝するか | ||
7. 極方程式における $r$ の正負について | ||
8. 極座標表示における扇形分割積分 | ||
9. 素因数分解の一意性 | ||
10. 三角関数の不定積分 | ||
11. コーシー・シュワルツの不等式 | ||
12. 放物線と2接線で囲まれた部分の面積 | ||
13. 整式の除法(発展編) | ||
14. 3次関数のグラフの特徴 | ||
15. 曲線の長さを求める公式の証明について | ||
16. もう迷わない!必要条件・十分条件のくすっと笑える判定方法 |
1.扇形分割の積分公式
証明
図の斜線部分の面積を $S(\theta)$ とします.$\theta$ が微小量 $\Delta\theta(>0)$ だけ変化したときの面積の変化量は,$\theta$ から $\theta+\Delta\theta$ までの $r$ の最大値,最小値をそれぞれ $M,m$ とすると \[\frac 12m^2\Delta\theta\leqq S(\theta+\Delta\theta)-S(\theta)\leqq \frac 12M^2\Delta\theta.\]
となります.正の数 $\Delta \theta$ で各辺を割ると \[\frac 12m^2\leqq \frac{S(\theta+\Delta\theta)-S(\theta)}{\Delta\theta}\leqq \frac 12M^2. \] ここで $\Delta\theta\to +0$ とすると,$M\to r,\ m\to r$ となりますから,はさみうちの原理により
となります.$\Delta\theta < 0$のときも同様ですから結局
です.ところで,中辺において $\Delta \theta\to 0$とした式 \[\lim_{\theta\to0}\frac{S(\theta+\Delta\theta)-S(\theta)}{\Delta\theta}\] は,$S'(\theta)$ の定義式に他なりません.つまり, \[S'(\theta)=\frac 12r^2\] であることがわかりました.従って求める面積は, \[\begin{align*} S(\beta)-S(\alpha)&=\Bigl[S(\theta)\Bigr]_\alpha^\beta\\[5pt] &=\int_\alpha^\beta\!S'(\theta)\,d\theta\\[5pt] &=\int_\alpha^\beta\!\frac 12r^2\,d\theta. \end{align*}\]
2.応用例
扇形分割の積分公式を使って面積を求めてみましょう.この公式が使えるケースは
- 極方程式として $r=f(\theta)$ が与えられている場合
- 点$(x,y)$ が $r=f(\theta)$ として $(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ と書ける,即ち\[\left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right)=f(\theta)\left(\begin{array}{c}\cos\theta\\ \sin\theta\end{array}\right)\] と極座標表示できる場合
です.
解法の指針
$f(\theta)=e^{-\theta}$ として,$\left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right)=f(\theta)\left(\begin{array}{c}\cos\theta\\ \sin\theta\end{array}\right)$ と表すことができますから,扇形分割の積分公式が使えます.
答
\[r^2=e^{-2\theta}(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=e^{-2\theta}\] となりますから, \[\begin{align*} S&=\int_0^\pi\!\frac12 e^{-2\theta}\,d\theta\\[5pt] &=\Bigl[-\frac14e^{-2\theta}\Bigr]_0^\pi\\[5pt] &=\boldsymbol{\frac{1-e^{-2\pi}}4}\ \ \cdots(\mbox{答}) \end{align*}\]
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