高校数学[総目次]
数学Ⅱ 第6章 微分法・積分法
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1. 微分係数 | [無料] | ||
2. 導関数 | [無料] | ||
3. 接線 | [会員] | [会員] | |
4. 関数の値の変化 | [会員] | [会員] | |
5. 極大・極小 | [会員] | ||
6. 関数のグラフと方程式・不等式 | [会員] |
7. 不定積分 | [無料] | ||
8. 定積分 | [会員] | ||
9. 様々な定積分 | [会員] | ||
10. 面積 | [会員] |

9. 様々な定積分
この節には,一部数学Ⅲの内容が含まれます.
9.1 重要な定積分
積分計算を大幅に省力化
例えば ∫31(x2−4x+3)dx を考えると
と計算できるが,これが −236=−86=−43 として計算できるとしたらどうだろう.これが事実なら上の計算は最早暗算レベルとなってしまう.
この計算は次の積分公式によっていたのであるが,のちに面積を積分で計算する際に大活躍する.この公式が使える場面で,公式を使う,使わないでは計算の負担が雲泥の差となる.
重要な定積分∫βα(x−α)(x−β)dx=−16(β−α)3
証明
∫βα(x−α)(x−β)dx=∫βα(x−α){(x−α)−(β−α)}dx=∫βα{(x−α)2−(β−α)(x−α)}dx=[(x−α)33−(β−α)⋅(x−α)22]βα (⋯☆)=(β−α)33−(β−α)32=−16(β−α)3
■
注意
(☆) のところで,数学Ⅲ 2.置換積分法(不定積分)に出てくる積分の公式
∫(x+a)ndx=1n+1(x+a)n+1+C
を利用した.(ただし C は積分定数)
この公式は数学Ⅱの範囲でも使える場面が案外多く,数学Ⅲを学ばない場合でも暗記しておきたい.特に難関大入試では,文系でもこの公式を使わなければとても時間内かつ正確に計算することが難しいと思える問題が存在する.
補足
① 公式が使える場面
2次関数 f(x) が,
- f(x)=(x−α)(x−β) と因数分解でき,
- しかも α と β が積分区間の両端にくるときに,
f(x) の α から β までの定積分を
∫βαf(x)dx=−16(β−α)3 として計算できるのである.
② β−α の計算方法
β−α は解と係数の関係により, |β−α|=√(α+β)2−4αβ から計算するとラクな場合もある.
③ 答案で公式を使う際のマナー
例えば ∫10(x2−x)dx を計算するとき,
∫10(x2−x)dx=−(1−0)36
といきなり書くのではなく,
∫10(x2−x)dx=∫10x(x−1)dx_=−(1−0)36
というように,被積分関数を因数分解して,積分区間の両端である0と1がはっきりと見える形にしてから公式を使うこと.これは公式が適用できる根拠を示すという意味で大切である.一般には
∫βαf(x)dx=∫βα(x−α)(x−β)dx_=−16(β−α)3 と因数分解した の形,即ち公式の左辺の形を書いておくということである.

例題1 定積分 ∫2−1(x2−x−2)dx を求めよ.
こたえ

例題2 定積分 ∫βα(2x2−6x+1)dx を求めよ.
こたえ

9.2 奇関数と偶関数の定積分
奇関数と偶関数の定積分は数学Ⅲの内容であるが,結果だけでも知っておくと,計算を大幅に省力化できる.
奇関数・偶関数という用語が登場するのはここが初めてではなく,三角関数 のところで既に学習済みである.
奇関数とは
まずは具体例から
例として関数 f(x)=x3 について, x のいくつかの値に対する f(x) の値を計算すると次のようになる.

すると例えば f(−3) と f(3) の値は,絶対値がともに27で,しかも異符号である.これと同じことが f(−2) と f(2),そして f(−1) と f(1) についてもいえる.

今は整数のいくつかの値について調べただけであるが,いかなる実数 a であろうと x=−a のときの値 f(−a) と,x=a のときの値 f(a) は絶対値が等しく,かつ異符号であることが
f(−a)=(−a)3=−a3=−f(a)
となることからわかる.
次に一般論
任意の実数 x に対して,
f(−x)=−f(x)
が成り立つ関数を奇関数(odd function)いう.グラフは原点に関して対称(点対称)である.
例 x,x3,x5,sinx,tanx

偶関数とは
まずは具体例から
例として関数 f(x)=x2 について, x のいくつかの値に対する f(x) の値を計算すると次のようになる.

すると例えば f(−3) と f(3) の値はともに9で等しい.これと同じことが f(−2) と f(2),そして f(−1) と f(1) についてもいえる.

今は整数のいくつかの値について調べただけであるが,いかなる実数 a であっても x=−a のときの値 f(−a) と,x=a のときの値 f(a) は同じ値であることが,
f(−a)=(−a)2=a2=f(a)
となることからわかる.
次に一般論
任意の実数 x に対して,
f(−x)=f(x)
が成り立つ関数を偶関数(even function)という.グラフは y 軸に関して対称(線対称)である.
例 x2,x4,5(定数関数),cosx
積分区間の両端の絶対値が等しく異符号の場合に使える決定打
奇関数と偶関数の定積分について,積分区間の両端の絶対値が等しく,かつ異符号であるとき,次が成り立つ:
奇関数と偶関数の定積分f(x)が奇関数のとき, ∫a−af(x)dx=0f(x)が偶関数のとき, ∫a−af(x)dx=2∫a0f(x)dx
略証
(詳しくは,数学Ⅲの 5. 置換積分法(定積分) を参照.)
∫a−af(x)dx=∫0−af(x)dx_+∫a0f(x)dx (←性質[5])=∫a0f(−x)dx_+∫a0f(x)dx (下線部の変形で数学Ⅲに出てくる置換積分法を用いた.)
f(x) が奇関数 → (下線部)=−∫a0f(x)dx
f(x) が偶関数 → (下線部)=∫a0f(x)dx
■
補足
関数の偶奇性の性質
- 定数倍しても,関数の偶奇は変わらない.
例 4x は奇関数 - 偶奇が同じ関数どうしの和,差も偶奇は不変.
例 2x3−5x は奇関数 - (あ) (奇関数)×(奇関数) → (偶関数)
(い) (偶関数)×(偶関数) → (偶関数)
(う) (奇関数)×(偶関数) → (奇関数)
例 (あ) x×x3=x4
(い) x2×x4=x6
(う) x×x2=x3
例
例題 定積分 ∫3−3(x3+3x2−6x−1)dx を求めよ.
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