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高校数学[総目次]

数学Ⅱ 第6章 微分法・積分法

  スライド ノート 問題
1. 微分係数 [無料]    
2. 導関数 [無料]    
3. 接線 [会員]   [会員]
4. 関数の値の変化 [会員]    
5. 極大・極小 [会員]    
6. 関数のグラフと方程式・不等式 [会員]    
7. 不定積分 [無料]    
8. 定積分 [会員]    
9. 様々な定積分 [会員]    
10. 面積 [会員]    

2. 導関数

2.1 導関数

 1. 微分係数 において,関数 $f(x)$ の $x=a$ における微分係数 $f'(a)$ とは,$x$ の値が $a$ から $b$ まで変化するときの平均変化率において,$a$ を固定し, $b$ を $a$ と異なる値をとりながら限りなく $a$ に近づけたときの極限値として定義された:

$\displaystyle f'(a)=\lim_{b\to a}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\ \cdots$ ①

 また $b$ を $a+h$ とおくと,

$\displaystyle f'(a)=\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}h\ \cdots$ ②

とも書けた.①と②は使いやすい方を用いればよいが,いずれで計算する場合であっても分母が必ず約分されなければならず(さもなくば極限が $\dfrac00$ の形になって意味をなさない),そう考えると分子から $b-a$ のかたまりを作り出さなければならない①よりは,$h$ で約分するだけの②の方が使い勝手が良い場合が多い.

例題 $f(x)\!=\!x^2$ の $x\!=\!a$ における微分係数を求めよ.

 解答例を表示する

 この例題の結果を用いると,関数 $f(x)=x^2$ については,$f'(1)$ や $f'(2)$ などが知りたいとき,個別に平均変化率の極限から計算しなくても,$f'(a)=2a$ の $a$ に1や2を代入するだけで微分係数が得られる.そこでこれを $f(x)=x^2$ の微分係数の公式としておくと便利であろう.

\[f'(a)=2a\]

 数学においては,先に決める変数を $x$ で与えることが多いので,$a$ を $x$ に変更して

\[f'(x)=2x\]

としておこう.この関係を用いれば

\[\begin{align*} f'(1)&=2\cdot1=2\\[5pt] f'(2)&=2\cdot2=4\\[5pt] f'(3)&=2\cdot3=6\\[5pt] &\vdots \end{align*}\]

という具合に簡単に微分係数が計算できる.

 このように $f(x)=x^2$ から $f'(x)=2x$ を得たが,この $2x$ は $x$ の値を1つ決めるとそれに応じて値がただ1つ決まるのであるから $x$ の関数である.

 一般に関数 $f(x)$ から導かれる $f'(x)$ を,関数 $f(x)$ の導関数といい,関数 $f(x)$ から導関数 $f'(x)$ を求めることを,関数 $f(x)$ を微分するという. 関数 $f(x)$ の導関数は,$x=a$ における微分係数を求める公式においてこれまで $a$ と書いていたところを $x$ に置き換えた次の式で計算される:

導関数の定義\[f'(x)=\lim_{h\to0}\frac{f(x+h)-f(x)}h\]

補足

 $y=f(x)$ の導関数の表し方には以下のような表記がよく用いられ,いずれも同じ意味である.

\[f'(x),\ \ \ y’,\ \ \ \frac{dy}{dx},\ \ \ \frac d{dx}f(x)\]

 前2つの「 $’$ 」を用いた表し方はラグランジュ(Lagrange,仏,1736-1813)が用いたものであり,後ろ2つの表し方は微分・積分学の基礎を作り上げた1人であるライプニッツ(Leibniz,独,1645-1716)が用いたものである.数学Ⅱの範囲ではラグランジュの記法を用いることが多いが,数学Ⅲではライプニッツの記法が重要となる.因みにライプニッツと並んで微分・積分学の基礎を作り上げたもう1人の重要人物であるニュートン(Newton,英,1642-1725)は $\dot{y}$ の記号を用いたようで,高校数学ではほぼ用いられないが経済学等ではしばしば用いられている.

例題 次の関数 $f(x)$ の導関数 $f'(x)$ を求めよ.
(1) $f(x)=x$
(2) $f(x)=x^3$

 解答例を表示する

2.2 $y=x^n$ の導関数

 前節の例題を通して3つの関数 $x,x^2,x^3$ の導関数を計算した.これらの結果から一般の $x^n$ の導関数が次のように予想できる.

\[\begin{align*} (x)’&=1(=1x^0)\\[5pt] (x^2)’&=2x(=2x^1)\\[5pt] (x^3)’&=3x^2\\[5pt] &\vdots\\[5pt] (x^n)’&=nx^{n-1}\\[5pt] \end{align*}\]

xn の導関数 $n$ を正の整数とすると,\[y=x^n\ \mbox{のとき},\ \ y’\!=\!nx^{n-1}\]

証明

 $f(x)=x^n$ とおくと,二項定理により

\[\begin{align*} &f(x+h)-f(x)\\[5pt] &=(x+h)^n-x^n\\[5pt] &=({_n{\rm C}}_0x^n+{_n{\rm C}}_1x^{n-1}h+{_n{\rm C}}_2x^{n-2}h^2+\cdots+{_n{\rm C}}_nh^n)-x^n\\[5pt] &=nx^{n-1}h+{_n{\rm C}}_2x^{n-2}h^2+\cdots+{_n{\rm C}}_nh^n \end{align*}\]

 よって

\[\begin{align*} y’&=f'(x)\\[5pt] &=\lim_{h\to0}\frac{f(x+h)-f(x)}h\\[5pt] &=\lim_{h\to0}(nx^{n-1}+{_n{\rm C}}_2x^{n-2}h+\cdots+{_n{\rm C}}_nh^{n-1})\\[5pt] &=nx^{n-1} \end{align*}\]

定数関数の導関数

 定数関数とは $y=1$ や $y=-4$ のように,任意の $x$ の値に対して常に同じ値をとる関数のことである.定数関数 $y=c$ ($c$ は定数)の導関数は,次の計算からわかるように,$c$ の値によらず0となる:

\[y’=\lim_{h\to0}\frac{c-c}h=\lim_{h\to0}0=0\]

定数関数の導関数$y=C\ (C$ は定数)のとき,$y’=0$

よくある質問

$\boldsymbol{ f(x)=x^n}$ を微分するには $\boldsymbol{ nx^{n-1}}$ から求める方法と $\boldsymbol{ \displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}h}$ から求める方法の2通りがあり,前者の方が圧倒的に簡単です.後者の方法は覚えなくてよいのではないでしょうか?

関数 $f(x)=x^n$ を微分する手段が2通りあると考えているようであるがそれは正しくない.$f'(x)=nx^{n-1}$ というのは $f(x)=x^n$ を定義通り $\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}h$ に従って計算した結果がそうであったというだけであって,上で示した証明の最初と最後を見ているだけに過ぎない.あらゆる関数の導関数は,基本的に定義である $\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}h$ に基づいて計算し,その中で頻繁に利用される関数についてはその結果を公式として覚えておこうということになっているのである.$(x^n)’=nx^{n-1}$ は最も使用頻度が高く,しかも微分した結果が非常にシンプルで覚えやすいので,公式としておく価値が高いと言える.数学Ⅲ になれば $\sin x$ や $\cos x$ といった三角関数や指数・対数関数の微分も登場するが,それらを微分する際にも最初の出発は $\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}h$ に従ってである.

2.3 導関数の性質

\[\begin{align*}&[1]\ y\!=\!kf(x)\Rightarrow\ y’\!=\!kf'(x)\ \ \ (k \mbox{は定数)}\\[5pt] &[2]\ y\!=\!f(x)\!+\!g(x) \Rightarrow y’\!=\!f'(x)\!+\!g'(x)\end{align*}\]

※ 証明は数学Ⅲの 1. 微分係数と導関数 を参照.

例1 $y=x^3-5x^2+7x+4$ のとき,

\[\begin{align*} y’&=(x^3)’-(5x^2)’+(7x)’+(4)’\ \ (\because \mbox{性質}[2])\\[5pt] &=3x^2-5(x^2)’+7(x)’+0\ \ (\because \mbox{性質}[1])\\[5pt] &=3x^2-5\cdot2x+7\cdot1\\[5pt] &=3x^2-10x+7 \end{align*}\]

例2 $S=\pi r^2$ のとき,(←半径 $r$ の円の面積)

$\dfrac{dS}{dr}=\pi(r^2)’=\pi\cdot 2r=2\pi r$ (円周)

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