中学1年数学 第1章 正の数と負の数
1.1 正の数と負の数
1.2 加法と減法
1.3 加法の計算法則
1.4 乗法と除法
1.5 乗法と除法の性質

1.1 はじめに
小学校までは数と言えば0以上の数でした。しかし例えば気温が-5℃だとか,ゲームの得点が-10ポイントになったとか,0より小さな数は日常的にもよく用いられており,その意味も恐らく十分に理解できているのではないでしょうか。
これから中学校の数学を学んでいく過程で,数を少しずつ拡張していきますが,その手始めとして,数の世界を負の数にまで広げていきましょう。
1.2 数直線
負の数を導入する前に,次のような数直線というものを説明していきたいと思います。数直線とは「数」を表す「直線」のことです。この直線上の左端に0をとり,そこから均等に目盛りを打って,1,2,3,…と書いていきます。

さて今作った数直線には次のような特徴があります。
① 数直線の右側へ行くほど数が大きくなる。
これは数直線を見れば納得できますね。
② どんな数も,数直線上の1点に対応する。
例えば1.5という数は,図の点Aに対応しています。逆に数直線上の点Aは1.5に対応しています。

このように,
1.5 ⟺ 点A
という具合に,1.5という数と,数直線上の点Aは完全に対応しています。これは1.5だけにとどまりません。あらゆる数が,数直線上の1点に対応し,逆に数直線上の1点はある数に対応しているのです。つまり
数と数直線上の点は,1対1に対応している
のです。この事実は誠に大切です。何故かというと,
数直線によって,数を目で見える形で捉えることができるから
です。少しわかりにくいですね。それではこの点についてもう少し詳しくお話しておきましょう。
ここで1とか2とかと話題にしている数は,考えてみれば抽象的なものです。1個,2個とか,あるいは1m,2mとか,日常で数を用いるときには具体的に何か物を数えたり,長さを測ったりする場合が大半です。ところが単に1とか2とかと述べた場合には,それらが指し示す何か明確なものがある訳ではなく,大小関係という性質をもった実態(形)のない概念に過ぎません。しかし数直線を用いることで,この実態のないものが,直線上の点として具体化します。そして,右側に行けば大きくなり,左側に行けば小さくなるという,数本来が持っている性質を目に見える形ではっきりと理解させてくれるのです。
1.3 負の数
0より小さな数を数を負の数(ふのすう)といい,「ー」(マイナス)の記号(負の符号といいます)を使って表します。例えば0より1だけ小さい数が ー1で,ー1より1だけ小さい数がー2,更に1だけ小さい数がー3,… というように表していきます。他にも,0より1.5だけ小さい数がー1.5で,0より 12 だけ小さい数が −12 となります。
そして,これまで使ってきた0より大きな数を正の数(せいのすう)といいます。こちらは「+」(プラス) の記号(正の符号といいます)を使って表すこともありますが,省略されることがほとんどです。「+」と「-」の記号をまとめて符号(ふごう)といいます。
0という数は,正の数と負の数の境界になっていますが,0は正の数でも負の数でもないとするという決まりになっています。つまり数というのは
① 正の数 ② 負の数 ③ 0
の3つに大別することができるのです。
数直線を拡張する
先ほど導入した数直線は,0から右側にどんどん書いていったものでした。これを左側にも伸ばしていって,負の数も書いていきましょう。

この拡張された数直線によって,負の数も含めた数全体の特徴を捉えていきましょう。といっても,上で述べた2つの特徴が,そっくりそのまま引き継がれます。つまり
① 数直線の右側へ行くほど数が大きくなる。
② どんな数も,数直線上の1点に対応する。
の2つです。
①については,-3より-2の方が大きく,-2より―1の方が大きく,-1より0の方が大きいことになります。
②については,例えばー1.5は数直線上の点Bに対応します。逆に数直線上の点Bは-1.5に対応しています。

このように数を負の数に拡張したあとでも
数と数直線上の点は,1対1に対応している
ということがいえるのです。そしてこれによって負の数にまで拡張した数全体についても,数直線によって,数を目で見える形で捉えることができるようになるのです。このようにして数を目で捉えていくというスタンスを意識すれば,このあとのつまずきがきっと少なくなることでしょう。
●絶対値
数直線において,0からの距離を「||」の記号を用いて表します。例えば0からの距離が2である数は2と―2です。

よって
|2|=2, |-2|=2
と表現します。
一般に |a| と書いて「a の絶対値(ぜったいち)」と読みます。注意点として,例えば |2| と書いたとき,121(百二十一) との区別がはっきりつくようにしっかりとまっすぐに線を引きましょう。
●整数と自然数
小学校では 0,1,2,3,… を整数といいましたが,これからは
…,-3,-2,-1,0,1,2,3,…
というように,小学校の時に整数と呼んでいた数に負の記号「ー」がついた負の数も含めて整数といいます。また,正の整数,すなわち1,2,3,… を自然数(しぜんすう)といって,この用語は今後頻繁に用いられます。

演習1 次の数直線で,点A,B,Cに対応する数を答えなさい。

こたえ
演習2 次の数に対応する点を,数直線に示しなさい。
(1) -4 (2) 1 (3) 2

こたえ
演習3 次の数の絶対値を答えなさい。
(1) ー3.14 (2) −85 (3) 0 (4) 53
こたえ