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高校数学[総目次]

数学Ⅰ 第2章 三角比

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2.三角比の相互関係

2.1 三角比の相互関係

 $\sin\theta=\dfrac35$ というとき,直角三角形の $\dfrac{\mbox{高さ}}{\mbox{斜辺}}$ の値が $\dfrac35$ であったということだから,長さの比が (斜辺):(高さ)=5:3 である.今例えば斜辺が5,高さが3とすれば,残りの底辺については三平方の定理から $\sqrt{5^2-3^2}=4$ と計算できる.すると,$\sin\theta$ 以外の $\cos\theta,\ \tan\theta$ も,$\cos\theta=\dfrac45$,$\tan\theta=\dfrac34$ と計算できてしまう.

底辺の長さが三平方の定理から4とわかる

 一般に直角三角形の3つの辺から2つを選ぶ方法は3通りあって,これらの各組から三角比が定義されたのであったから,$\tan \theta,\ \sin\theta,\ \cos\theta$ のどれか1つでもわかっていれば,あとの2つは計算で求めることができてしまう.何故なら残りの1辺は三平方の定理から求めることができ,従ってその直角三角形の3つの辺の長さの比がすべてわかってしまうからだ.

 上の例では $\sin\theta=\dfrac35$ とすれば,それに応じて $\cos\theta,\ \tan\theta$ が決まった.つまり,3つの三角比の間には相互に関係があるのだ.その関係として公式になっているのが3つあるのだが,それをまずは具体例で見ていくとしよう.

 図のように $\theta$ をとると,$\sin\theta=\dfrac35,\ \cos\theta=\dfrac45,\ \tan\theta=\dfrac34$ であるから

$3=5\sin\theta\ (\cdots$ア), $4=5\cos\theta\ (\cdots$イ), $\tan\theta\!=\!\dfrac34$

である.三平方の定理により $3^2+4^2=5^2$ が成り立つから,左辺の 3 と 4 を (ア),(イ) に置き換えて

\[(5\sin\theta)^2+(5\cos\theta)^2=5^2\]

\[5^2(\sin\theta)^2+5^2(\cos\theta)^2=5^2\]

 両辺を $5^2$ で割ると

\[\sin^2\theta+\cos^2\theta=1\]

が成り立つ.

※ $(\sin\theta)^n$ はしばしば $\sin^n\theta$ と表される.$\cos\theta$ や $\tan\theta$ も同様.

次に, $\tan\theta=\dfrac34$ について,右辺の分母子を (ア),(イ) で置き換えると

\[\tan\theta=\dfrac{5\sin\theta}{5\cos\theta}\]

 右辺の5を約分して

\[\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}\]

 最後に先ほど得られた $\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ の両辺を $\cos^2\theta$ で割ると

\[\begin{align*} \dfrac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta}+1&=\dfrac1{\cos^2\theta}\\[5pt] \therefore\ \ \left(\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}\right)^2+1&=\dfrac1{\cos^2\theta} \end{align*}\]

 左辺にすぐ上で得られた $\tan\theta$ の式を代入して

\[1+\tan^2\theta=\dfrac1{\cos^2\theta}\]

 これら3つの関係式が最重要なものとして今後大活躍することになる.

 上の例と同様にして,一般の場合の三角比の相互関係を導いてみよう.

 上の図において三平方の定理により $x^2+y^2=r^2$ が成り立つ.$x=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta$ であるから,これらを代入して,

\[ r^2\cos^2\theta+r^2\sin^2\theta=r^2\]

 両辺を $r^2$ で割って,

$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1\ \ \cdots$ ①

 次に,

\[ \tan\theta=\frac yx=\frac{r\sin\theta}{r\cos\theta}=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\]

となるから,

$\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}\ \ \cdots$ ②

 また,①の両辺を $\cos^2\theta$ で割ると,

\[ \frac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta}+1=\frac 1{\cos^2\theta}\]

\[ \left(\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\right)^2+1=\frac 1{\cos^2\theta}\]

 ②を代入して

$1+\tan^2\theta=\dfrac1{\cos^2\theta}\ \ \cdots$ ③

 ①~③は三角比における最重要公式としていつでも直ちに使えるよう記憶しておく必要がある.

三角比の相互関係
\[\begin{align*} &[1]\ \sin^2\theta+\cos^2\theta=1\\[5pt] &[2]\ \tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\\[5pt] &[3]\ 1+\tan^2\theta=\frac1{\cos^2\theta} \end{align*}\]

 冒頭で $\tan\theta,\ \sin\theta,\ \cos\theta$ には相互に関係があるといったけれども,別の言い方をすれば,$\tan\theta,\ \sin\theta,\ \cos\theta$ は同じ $\theta$ の値に対してめいめい勝手な値をとることが許されないということである.例えば「$\sin\theta=\dfrac12$ かつ $\cos\theta=\dfrac13$ の場合」などという仮定をおくことはできない.

例題1 $\theta$ は鋭角とする.$\cos\theta=\dfrac34$ のとき,$\sin\theta,\ \tan\theta$ の値を求めよ.

こたえ

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例題2 $\theta$ は鋭角とする.$\tan\theta=\dfrac34$ のとき,$\sin\theta,\ \cos\theta$ の値を求めよ.

こたえ

 解答例を表示する

2.2 $90^\circ-\theta$ の三角比

 $\theta$ が鋭角のとき,図より次が成り立つ:

\[\begin{array}{ll} \sin\theta=\dfrac yr,&\sin(90^\circ-\theta)=\dfrac xr\\[5pt] \cos\theta=\dfrac xr,&\cos(90^\circ-\theta)=\dfrac yr\\[5pt] \tan\theta=\dfrac yx,&\tan(90^\circ-\theta)=\dfrac xy \end{array}\]

 よって,次のような関係が成り立つことがわかる:

90°-θ の三角比 \[\begin{align*} &\sin(90^\circ-\theta)=\cos\theta\\[5pt] &\cos(90^\circ-\theta)=\sin\theta\\[5pt] &\tan(90^\circ-\theta)=\frac1{\tan\theta} \end{align*}\]

内容が理解ができたら,次は演習問題 にチャレンジしましょう.

次は,3.三角比の拡張
前は,1.正接,正弦,余弦

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