公務員試験のための数学ワークブック

 公務員試験の一般知能分野、教員採用試験等の一般教養分野の数学に限定して説明しています。より本格的に復習されたい方は、本編の 高校数学 をご覧ください。

vol.7 数列・漸化式

 さて,今回は数列,及び漸化式について取り上げます.
 この分野は今まで以上に高校数学の色彩が色濃くでているため,難しいと感じている人が多いようです.しかし一般知能での出題傾向を考えますと,  1+2+3+  +n=n(n+1)2 といった最低限のものが使えるならば,高校数学を本格的に復習する必要はあまりないと思われます.まあ知っていて損はない,という程度でしょうか.

1. 数列

 ある規則に従って次々と並んでいる数を数列といいます.例えば, 2, 4, 6, 8, ( ), 12, 14,  という数の並びがあった場合,すぐにカッコの中にどんな数字が入るのかがわかります.これはこれらの数が,ある一定の規則に従って書かれているからなのです.
 数列には上の例のように,その規則が見てすぐにわかるものもあれば,ちょっと見ただけではわからないもの,あるいは,ややこしい計算を繰り返した末,ようやく規則がわかるものなどいろいろです.
 このSectionではその中でも比較的簡単な規則によって作られる,等差数列,等比数列を中心にみていきます.

1.1 等差数列

 ある数から始まって,次々と一定の数を加えていくことによってできる数列を等差数列といいます.例としては, 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15,  などがあります.この数列は,1から始まって,一定の数2をどんどん加えていくことで作ることができます.
 ここで用語を説明しておきます.数列のそれぞれの数をといい,1, 3, 5, を順に,第1項,第2項,第3項といいます.特に第1項は初項ともいいます.そして,次々と加えていく一定の数2を公差といいます.従ってこの数列は,初項1,公差2の等差数列といいます.

演習問題1.1 次の数列はどんな数列か.「初項1,公差2の等差数列」という形式で答えなさい.
(1) 4, 7, 10, 13, 17, 20, 
(2) 16, 11, 6, 1, 4, 9, 

こたえ

1.2 等比数列

 ある数から始まって,次々と一定の数を掛けていくことによってできる数列を等比数列といいます.例としては, 1, 3, 9, 27, 81, 243, 729, 2187,  などがあります.この数列は,1から始まって,一定の数3をどんどん掛けていくことで作ることができます.
 ここでも等差数列のときと同じような用語があります.数列のそれぞれの数をといい,1, 3, 9, を順に,第1項,第2項,第3項といいます.特に第1項を初項と呼んでいます.ここまでは等差数列と同じです.次々と掛けていく一定の数3を公比といいます.従ってこの数列は,初項1,公比3の等比数列といいます.

演習問題1.2 次の数列はどんな数列か.「初項1,公比2の等比数列」という形式で答えなさい.
(1) 4, 8, 16, 32, 64, 128, 
(2) 16, 8, 4, 2, 1, 12, 

こたえ

1.3 階差数列

 さて,次の数列は一体どういう規則で作られているのでしょう? 1, 2, 4, 7, 11, 16, 22,  この数列は,等差数列でも等比数列でもありませんが,全くでたらめに書かれているというわけではありません.ちゃんと規則が存在するのです.その規則を知るために,各項の差をとってみます. 1247111612345  すると,1,2,3,4,5, と規則がよくわかる数列が現れました.この差を取ったときに現れた数列は,初項1,公差1の等差数列です.このように各項の差を取ったときにできる数列を階差数列といいます.
 この例の場合は,差をとったときに等差数列が現れましたが,等比数列やその他の規則を持つ数列が現れる場合もあります.また,1回差を取っただけではだめで,もう一度差を取ってはじめて規則がわかるというものもあります.

演習問題1.3 次の数列はどんな数列か.「階差数列が,初項1,公差2の等差数列をなす」という形式で答えなさい.
(1) 2, 2, 5, 11, 20, 32, 
(2) 1, 2, 6, 22, 86, 342, 

こたえ

2.和の公式

 次に,等差数列,等比数列の和の公式についてみていきましょう.

2.1 等差数列の和の公式

 例えば,Section1.1で扱った数列について, S5=1+3+5+7+9 を求めてみましょう.「S5」という表現は,「初項から第5項までの和」という意味でよく使われます.これを普通に足し算してももちろん求められますが,一般の場合への拡張を考えて,ちょっと違った方法で求めてみます.
 まず,上の式と同じ式で,順番を逆にしたものを書きます.そして2式を辺々加えるのですが,これを上下1つずつ加えていきます. S5=  1+  3+  5+  7+  9+) S5=  9+  7+  5+  3+  12S5=10+10+10+10+10  すると,右辺には10が5回出てきます.この10は,初項と末項(下の(注)を参照)の和である1+9で,「5回」の5は項数であることに注意してください.

(注) 着目している数列の一番最後の項を末項といいます.

この方程式を解くと, 2S5=10×5=50 S5=25 () となります.

 一般に,

等差数列の和の公式 Sn=n(+)2

となります.このうち特に, Sn=1+2+3+4+  +(n1)+n のケースでは,初項が1,末項がnですから,それを上の式に代入して,

1+2+3+  +n=n(n+1)2

となります.この関係式は一般知能では頻出ですから公式としてしっかり覚えておきましょう.

演習問題2.1 次の数列の初項から第4項までの和と,第2項から第5項までの和を,等差数列の和の公式を用いて求めなさい.
(1) 2, 6, 10, 14, 18, 22, 
(2) 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 

こたえ

2.2 等比数列の和の公式

 等比数列の和の公式は,一般知能ではほとんど必要ないので,公式を掲載するだけにとどめます.

等比数列の和の公式 Sn=×(rn1)r1

 ここで,Snは初項から第n項までの和を表し,rは公比を表します.例えば,Section1.2での例を,初項から第5項まで足すと, 1+3+9+27+81=1×(351)31=24312=121 となります.

演習問題2.2 次の数列について,初項から第4項までの和と,第2項から第5項までの和を求めなさい. 2, 6, 18, 54, 162, 486, 

こたえ

3.一般項

 ここまでやっておかなければならない必要性は必ずしもないと思うのですが,以前国家Ⅱ種等で出題されたこともあり,簡単にだけみておくことにしましょう.

3.1 等差数列の一般項

1, 4, 7, 10, 13,  の初項1,公差3の等差数列を例に説明していきましょう.この数列の表現の仕方として,この数列全体を「an」 とし,第1項(=初項)をa1,第2項をa2,第3項をa3とします.つまり, a1=1,a2=4,a3=7,a4=10,  と表現します.このとき,aの添え字nによって,それが第何項目にあたるのかを区別しています.すると,このnを使って一般的に an を表現できないものでしょうか.すなわち, an=(nを使った式) という形にです.実は,等差数列の場合,簡単にこれができます.これは次のように考えます.

  • 第1項は,第1項に,公差を0回足したもの.すなわち,1=1+3×0
  • 第2項は,第1項に,公差を1回足したもの.すなわち,4=1+3×1
  • 第3項は,第1項に,公差を2回足したもの.すなわち,7=1+3×2
  • 第4項は,第1項に,公差を3回足したもの.すなわち,10=1+3×3

    
 すると,この考え方から等差数列の一般項が導き出されます.

等差数列の一般項 an=a1+(n1)d

 ここで,dは公差を表します.この例の場合,a1=1, d=3でしたから, an=1+(n1)×3=3n2 となり, a1=3×12=1a2=3×22=4a3=3×32=7a4=3×42=10  となります.

演習問題3.1 次の数列の一般項を求めなさい.さらに,一般項からa6を求めなさい.
(1) 5, 10, 15, 20, 25, 
(2) 2, 6, 10, 14, 18, 

こたえ

3.2 等比数列の一般項

 等比数列の一般項の考え方も,等差数列の場合とほとんど同じです.等差数列が初項に公差を順に加えていったのに対して,等比数列では公比を順に掛けていくことにより求められます.
 例えば, 3, 6, 12, 24, 48, 96,  という等比数列については,

  • 第1項は,第1項に,公比を0回掛けたもの.すなわち,3=3×20
  • 第2項は,第1項に,公比を1回掛けたもの.すなわち,6=3×21
  • 第3項は,第1項に,公比を2回掛けたもの.すなわち,12=3×22
  • 第4項は,第1項に,公比を3回掛けたもの.すなわち,24=3×23

    
という具合です.すると,この考え方から等比数列の一般項が導き出されます.

等比数列の一般項 an=a1rn1

 ここで,rは公比を表します.この例の場合,a1=3, r=2でしたから, an=32n1 となります.

演習問題3.2 次の数列の一般項を求めなさい.さらに,一般項からa6を求めなさい.
(1) 2, 8, 32, 128, 512, 
(2) 3, 15, 75, 375, 1875, 

こたえ

4.漸化式

 それでは最後に漸化式(ぜんかしき)について復習しておきましょう.
 数列の各項どうしの関係を表した式を,漸化式といいます.具体的な例をみていきましょう.

例題 次の漸化式によって定められる数列はどのような数列か答えなさい.
(1) a1=1,  anan1=2(n2)
(2) a1=3,  an=2an1(n2)

こたえ

(1) a1だけは与えられていますが,それ以外は与えられていません.しかし,漸化式がありますから,ここからイモヅル式に求めることが可能です.
 まず,漸化式のnに2を代入してみると, a2a1=2  いま,a1=1がわかっていますから,これを代入して, a21=2 a2=3 となり,a2が求められました.次にnに3を代入してみましょう. a3a2=2  ここで,先程a2=3を求めましたから,これを代入して, a33=2 a3=5 となり,a3が求められました.これを繰り返していけば,この数列をいくらでも求めることが可能です.よって, 1, 3, 5, 7, 9, 11,  となりますからこの数列は

初項1,公差2の等差数列  (答)

です.
 この漸化式をもう一度見直してみると,anan1という隣り合った項の差が常に2であるということですから,漸化式を見ただけでこの数列が公差2の等差数列であることがわかります.

(2) (1)と同じように,漸化式にn=2から順に代入してみると, a2=2a1a3=2a2a4=2a3a5=2a4 となります.a1=3がわかっていますから,これを順次代入して, a2=2a1=23=6a3=2a2=26=12a4=2a3=212=24a5=2a4=224=48  従って 3, 6, 12, 24, 48, 96,  となりますからこの数列は

初項3,公比2の等比数列  (答)

です.
 この漸化式もよくみてみると,anan1という隣り合った項の関係について,次の項が,前の項の常に2倍であるということですから,漸化式を見ただけでこの数列が公比2の等比数列であることがわかります.

演習問題4 次の漸化式によって定められる数列はどのような数列か答えなさい.
(1) a1=2,  an=an1+4(n2)
(2) a1=2,  anan1=3(n2)

こたえ

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