公務員試験のための数学ワークブック
公務員試験の一般知能分野、教員採用試験等の一般教養分野の数学に限定して説明しています。より本格的に復習されたい方は、本編の 高校数学 をご覧ください。

vol.5 指数法則と余り
例えば2100を3で割った余りなどを求めたいときはどのようにすればよいのでしょう? もっとも,腕力で2100を計算して3で割ることも可能でなくはありませんが,短時間で答を求めることはとても望めそうにありません.実は2100を3で割ると,その余りが1であることはほとんど瞬間的に計算できます.一体どうやってそんなことができるのでしょう?
今回は,そのようなとても筆算によって余りを求められそうにないものについて,今までとは少し違うユニークな方法で求めていくことなどを学ぶことにしましょう.
1. まずは下ごしらえ~指数法則
今回学習していく上で必要となる指数法則について簡単に復習しておきましょう.
一般知能で知っておくと役に立つ指数法則は,以下の3つです.
指数法則 a>0, b>0のとき, 1. am×an=am+n2. (am)n=amn3. (ab)n=anbn
こういう指数の関係式は忘れてしまっても,必要になったときにその場で簡単な計算で確認すれば思い出せます.例えば1番目の式は,
22×23
を考えてみて,
22=2×223=2×2×2∴ 22×23=(2×2)×(2×2×2)=25
∴ 22×23=22+3
という具合に確かめるわけです.2番目の式も同じように考えることができます.例えば,
(22)3
を考えてみて,
(22)3=22×22×22=(2×2)×(2×2)×(2×2)=26
∴ (22)3=22×3
と公式を確認できます.
演習問題1 次の値を2( ) の形にしなさい.
(1) 25×24 | (2) (24)12 |
(3) 86 | (4) (2×42)3 |

2. 余りの性質
ごく基本的な余りの性質をまず述べておきます.それは
余りは,割る数より小さい
ということです.例えば,
7÷2=3 あまり 1
をみてみますと,余りの1は割る数の2より小さくなっています.「7÷2」という計算の一つの解釈として,「7個のものから2つずつとっていくと,もうこれ以上2個のセットが取れないで余ってしまうものは何個あるか.」ということですから,余りが2以上ある場合,まだ2個のセットが取れてしまいます.従って例えば,
7÷2=2 あまり 3
としては誤りです.

3. 「2100を3で割った余り」がすぐわかる?~指数を含む割り算の余り
さて,ここで冒頭で述べた2100を3で割った余りが1となることを求めるからくりを説明しましょう.
3.1 重要な考え方
まず,おさえておきたい重要な考え方を述べておきます.
例題 14個のおはじきから3個ずつとると何個余るか求めなさい.
こたえ
例えば今,2つ分は取ったとしましょう.
○○○|○○○ ○○○○○○○○
このとき,私たちが考えなければならないのは,
残った8個から,3個のセットが何個取れて何個余るのか
ということです.3個のセットとして取れることがわかった最初の6個はもはや考えなくてよいことになります.これを式で説明すると,
14=3×2+8_
となった場合,3の倍数を除いた8のみを考えればよいわけです.故に,
(14を3で割った余り)=(8を3で割った余り)
となることがわかります.この 14=3×2+8 という式の形は,Section2でみてきたのとよく似ていて,
14÷3=2 あまり 8
と解釈してもよさそうです.8が余りに相当していますが,8は割る数3より大きいですから,Section2でみてきたように,14÷3 の答えとしては不適切です.しかし,「14個から3個を2回取ると,あと8個余っている」という感覚は,余りに関する問題において重要です.
ここまでをまとめておきましょう.
3.2 簡単な例
いきなり 2100 を3で割った余りを考えるのは大変ですから,もう少し簡単な例からみていきましょう.
例題 次の値を3で割った余りを求めなさい.
(1) 22 (2) 24 (3)26
こたえ
(1) 22=4ですから,
4÷3=1 あまり 1
となり、求める余りは1です.
さて,先程述べました重要な考え方によって,この問題をもう一度検討してみます.上の結果から,
4=3×1+1
と書けます.この式の右辺で3×1の部分は3の倍数ですから,3で割り切れます.問題は,3の倍数としてくくれなかった1です.この部分を3で割った余りが,全体の余りと一致するのでした.従って,
1÷3=0 あまり 1
となり,求める余りは1であることがわかります.
(2) 24=(22)2=42.ところで,(1)の結果より,
22=4=3×1+1=3+1
ですから,
42=(3+1)2
です.ここで,この式を乗法公式である (a+b)2=a2+2ab+b2 を用いて展開すると,
(3+1)2=32+2⋅3⋅1+12=3(3+2)_+1
となります.下線部の3(3+2)は3の倍数ですから3で割り切れます.問題は最後の1で,ここを3で割った余りが,全体を3で割った余りと一致します.よって,
1÷3=0 あまり 1
となり,求める余りは1です.
(3) 26=(22)3=43.ところで,(1)の結果より,
22=4=3×1+1=3+1
ですから,
43=(3+1)3
です.ここで,この式をちょっと難しい乗法公式
(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
を用いて展開すると,
(3+1)3=33+3⋅32⋅1+3⋅3⋅12+13=3(32+32+3)_+1
となります.下線部の3(32+32+3)は3の倍数ですから3で割り切れます.問題は最後の1で,ここを3で割った余りが,全体を3で割った余りと一致します.よって,
1÷3=0 あまり 1
となり,求める余りは1です.
このあたりまでくると薄々気が付かれた方もいらっしゃるでしょうが,実は,4n(2n ではありません)を3で割った余りは常に1なのです(ただし,n は0以上の整数).
演習問題2 次の計算の余りを,このSectionでの考え方に基づいて求めなさい.
(1) 342÷6 (2) 12342÷12

4. パスカルの三角形
ここでは(a+b)nの展開項について考えていきます.今まで出てきたものとして,n=2,n=3があります.再掲しておきます.
(a+b)2=a2+2ab+b2(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
n=4以上も,
(a+b)4=a4+4a3b+6a2b2+4ab3+b4(a+b)5=a5+5a4b+10a3b2+10a2b3+5ab4+b5(a+b)6=a6+6a5b+15a4b2+20a3b3+15a2b4+6ab5+b6⋮
となっていきます.これらは例えば,
(a+b)4=(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)
を1つ1つコツコツと計算しなくても書く方法があります.実は,係数にヒントがあります.(a+b)n を展開して係数だけを書き出してみると,n=1のケースから順に
1 1
1 2 1
1 3 3 1
1 4 6 4 1
1 5 10 10 5 1
1 6 15 20 15 6 1
⋮
となっています.とてもきれいな形をしていますね.これをパスカルの三角形といいます.これらの数字の書き方の規則は至って簡単で,
- 端は全て1とする.
- それ以外の数は,すぐ上にある左右の2数の和とする.
です.例えば,(a+b)4の行の中央に「6」がありますが,これはすぐ上にある2つの3の和(つまり3+3)になっています.
次に文字についてみてみましょう.例えば,(a+b)4 について,文字の部分だけを順に拾っていくと,
a4, a3b, a2b2, ab3, b4
となっています.どんな規則性でしょう?x≠0とすると,任意のxについて,x0=1であることに注意すると上の式は,
a4b0, a3b1, a2b2, a1b3, a0b4
となります.もうお分かりですね.aについては指数を4から順に0まで1ずつ小さくしていき,逆にbは指数を0から順に4まで1ずつ大きくしていっています.この規則性は,(a+b)nのnが何であっても同じです.
ここで注目して頂きたいところは,(a+b)nのnが何であっても,展開項にbしか含まれていないのは,最後のbnの項だけであるということです.すなわち(a+b)nのnが何であっても,bnを除く項は,全てaを含んでいるのでこれらをaでくくることができるということがいえます.式で書くと,
(a+b)n=a×(何かある数)+bn
という変形が可能だというわけです.
この考えを用いて4nを3で割ったあまりが常に1であることを示すことができます.4nを3で割るわけですから,
4=(3の倍数)+(何かある数)
の形にしておかなければなりません.この場合,
4=3+1
が最適です.すると,
4n=(3+1)n=3の倍数+1n=3の倍数+1
従って,これまで学習してきたことにより,4nを3で割った余りは,1を3で割った余りに等しいことがいえます.よって,
1÷3=0 あまり 1
となります.この余りは,nの値に関係なく常に1ですから,n=50のケース,すなわち,
450=(22)50=22×50=2100_
を3で割っても余りは1であることがわかります.
以上により
2100 を3で割った余り=450を3で割った余り
=(3+1)50 を3で割った余り
=1
となります.

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- vol.2 連立方程式・不等式
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