公務員試験のための数学ワークブック
公務員試験の一般知能分野、教員採用試験等の一般教養分野の数学に限定して説明しています。より本格的に復習されたい方は、本編の 高校数学 をご覧ください。

有理数・無理数
実数は有理数と無理数に分けることができます.有理数とは分数の形に表現できる数です.無理数は有理数ではない数のことで,例えば √2=1.41421356⋯ や √3=1.7320508⋯ は無理数です.円周率 π は根号(ルート)は付いていませんが,無理数であることが知られています.つまりこれらの数は分数の形で表現することができません.
今回はこれらの数について取り上げます.目標は,無理数の計算ができるようになること,有理化ができるようになることです.

1. 身近な数だけどいろいろある~有理数
まずは私たちに最も身近な有理数についてみていくことにしましょう.
冒頭でも述べましたように,有理数とは分母と分子をともに整数として分数の形に書ける数のことを指します.
有理数とは?
分母と分子がともに整数である分数で表すことができる数
例えば,
0, 1, 4, 23, 15.8, −123
などは全て有理数です.何故なら
01, 11, 41, 23, 15810, −1231
という具合に,分母と分子に整数を用いて分数の形で表現できるからです.(もっとも,分数の表現の仕方は 41=82 など1通りではありません.)
有理数における計算は皆さん大丈夫ですね?分数に関するものは vol.1 で取り上げておきました.小数の掛け算や割り算も一般知能でそれほどでてくるわけではありませんが,折角考え方がわかっているのに途中の計算でつまずいた,なんてもったいないことにならにようにしっかり復習しておきましょう.
演習問題1 次の計算をしなさい.
(1) 3.6×0.4 (2) 7.242÷5.1

2. 結局のところよくわからない~無理数
さて次に,無理数です.無理数は分数の形に表現できない数で,循環しない無限小数です.実際,無理数である π は,
π=3.1415926535897932384626433832795⋯
となって,いつまでたっても終わりがなく,また繰り返し(循環)がありません.√2 や √3, √5 も同じです.不規則な数字が永遠に続きます.こういうわけで,無理数とは,まあ何だかよくわからないけど,とにかく有理数でないものが無理数なのだと気楽に考えてください.
無理数とは?
有理数ではない実数
2.1 平方根
無理数といえば,何といっても √ 記号のついた平方根(2乗根)です.この記号の意味を復習していきましょう.
例えば2乗して(同じ数を2回掛けて)2になる数はどんな数でしょう? 「2乗して2になる数 x は何ですか?」ということですから,式で書き表すと2次方程式の形になって,
x2=2
となります.この答えは,x=1.41421356⋯ と x=−1.41421356⋯ の2つあって,そのいずれも最後まで書き尽くすことができず,また分数でも表せない数(無理数)であることが知られています.そこで,この2つの数を記号化して,正の方を √2,負の方を −√2 と書き表すのです:
1.41421356⋯ → √2, −1.41421356⋯ → −√2
掛け算でマイナス“−”の記号が偶数回出てきたときは,全体が正(プラス)になることに注意してください:
√2×√2=2(−√2)×(−√2)=2
一般に a が正の数のとき,2乗して a になる数は正と負の2つがあり,そのうち正の数の方を √a,負の数の方を −√a と書きます.そしてこの2数を「 a の平方根」と言います.まとめておきましょう.
平方根とは?
a の平方根(2乗根)とは,
2乗(平方)して a になる数
さて,次の値を考えてみましょう.
√4
これは,
√22
と書くこともできます.平方根の定義に照らしてみると,「2乗して4になる正の数は何ですか?」ということでした.2つ目の式から明らかなように2乗して4になる正の数は2です.従って,
√4=√22=2
となります.同様にして,
√9=√32=3√16=√42=4√100=√102=10
などがいえます.当然のことながら,√4 や √9 は無理数ではありません.一般に,
a>0 のとき, √a2=a
が成り立ちます.
2.2 平方根の四則演算
続いて,平方根の四則演算についてみていきましょう.まず掛け算,割り算ですが,ここで覚えるべき約束事は,
平方根の掛け算と割り算
a>0, b>0 ならば,
√a×√b=√ab√a√b=√ab
の2つです.例えば,
√2×√3=√2×3=√6√15√3=√153=√5
となります.右辺から左辺への書きかえもよく行われます.例えば,
√35=√5×7=√5×√7√23=√2√3
などといった具合です.
例題 (1)は計算をし,(2)は簡単な形にしなさい.
(1) √2×√6 (2) √45
こたえ
解答例を表示する >
さて次に,足し算,引き算について復習しておきましょう.
√ の足し算,引き算は,文字式と全く同様に扱います.例えば,
√2+3√2
を計算するとき,
x+3x
を計算するのと同様の手順を踏んで,√2 をあたかも文字のようにみなして次のように計算します.
√2+3√2=(1+3)√2=4√2
平方根の足し算と引き算
m√a+n√a=(m+n)√am√a−n√a=(m−n)√a
√ の部分は文字のように扱うわけですから,例えば,
√2+√3
といった計算はもうこれ以上できません.x+y という文字式はこれ以上どうしようもありませんよね.
演習問題2 次の計算をしなさい.
(1) 5√2×3√2 (2) 3√5×4√15
(3) 24√6÷8√3 (4) 2√14÷3√2
(5) √3(2+√2) (6) 3√2(√2−2√6)

3. やっと答えを出したのに選択肢にない~有理化
今回の最後に有理化を取り上げます.問題を解いて,√ を含んだ分数の答えが出て,何となく間違っているのかもという不安を抱きつつ選択肢を見てみるとやっぱり答えがない.そういう経験はありませんか?その場合,有理化をすれば答えが選択肢にある場合があります.
有理化とは,分数の分母に無理数があった場合,その分数の分母を有理数にすることをいいます.
有理化とは?
分数の分母が有理数になるように変形すること
具体的にみていきましょう.
例えば,
√2x=3
という方程式を解くと,
x=3√2
となります.これはもちろん正しい答えです.しかし,分母が無理数になっています.この分母を有理数にしたいのですが,一体どのようにすればよいのでしょう?それにはSection2.1の冒頭で述べた平方根の定義を思い出せばよいですね.再掲しておきます.
平方根 a の平方根(2乗根)とは, 2乗(平方)して a になる数
√ のついた数は2乗するとルートの中身の数になるということですから,上の例では単純に分母と分子に √2 を掛ければよいことになります.
x=3√2=3×√2√2×√2=3√22 ⋯(答)
それでは次の例をみていきましょう.
例題 次の数を有理化しなさい.
43+√2
こたえ 先程の例題では分母と同じ数を,分母と分子に掛けることで有理化できましたが,この例題で同じことをやると,
4×(3+√2)(3+√2)×(3+√2)
です.分母だけを乗法公式を使って計算してみると,
(3+√2)(3+√2)=(3+√2)2=32+2⋅3⋅√2+(√2)2=9+6√2+2=11+6√2
となって,分母にはまた √2 が現れています.従って分母の数11+6√2 が再び無理数ですから,この方針では分母を有理数にできません.ではどのようにすれば分母が有理数になるのでしょう? それには乗法公式を使います.どの乗法公式かというと2番目の,
(a+b)(a−b)=a2−b2
です.つまり,分母の式の「+」記号を「−」記号に変えたものを,分母と分子の両方に掛ければいことになります.実際に計算してみましょう.
43+√2=4×(3−√2)(3+√2)×(3−√2)
分母だけを計算すると,乗法公式(2)を使って,
(3+√2)(3−√2)=32–(√2)2=9−2=7
故に,
4(3−√2)(3+√2)(3−√2)=12−4√27 ⋯(答)
よって,めでたく分母が有理数になりました.このように分子だけが √ を含むようにしてやることできるのです.
演習問題3 次の式を有理化しなさい.
(1) √3√2 (2) 9√3
(3) 43+√5 (4) −52−√6

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- vol.2 連立方程式・不等式
- vol.3 乗法公式・因数分解と2次方程式
- vol.4 有理数・無理数
- vol.5 指数法則と余り
- vol.6 記数法
- vol.7 数列・漸化式