公務員試験のための数学ワークブック
公務員試験の一般知能分野、教員採用試験等の一般教養分野の数学に限定して説明しています。より本格的に復習されたい方は、本編の 高校数学 をご覧ください。

連立方程式・不等式
さて今回は「連立方程式・不等式」です.連立方程式は一般知能において最もよく利用する数学の道具の一つで,
しっかりマスターしておく必要があります.文字が2個の一般的なケースに加え,文字が3個以上の場合についても扱います.不等式は実はそれほど一般知能では使いませんが,この機会に簡単に復習しておきましょう.
1. 千里の道も一歩から~1元1次方程式
まず,方程式のうちで最も簡単な文字が1個だけ(1元)の方程式について復習しておきましょう.
例題 次の x の値を求めなさい.
(1) −3x+1=7 (2) 0.2x=15
こたえ
(1)
−3x+1−1_=7−1_∴ −3x=6∴ −3x×(−13)_=6×(−13)_∴ x=−2 ⋯(答)
(2) 両辺を10倍して
2x=150∴ 2x×12_=150×12_∴ x=75 ⋯(答)
その昔中学生を教えていたとき,6=3xという方程式があると,「文字は左辺へ,数字は右辺へ」に従って,−3x=−6と変形してから両辺を−3で割ってx=2とする生徒がいました.しかし「=」で結ばれた両辺は天秤でいうところの「釣り合った」状態であり,釣り合っている左右のおもりを入れ換えてもやはり釣り合うのと同様に,方程式では左辺と右辺をごっそり入れ換えることは自由にできます.(不等式では左右の辺を入れ換えると不等号の向きも変わるので注意してください.)
演習問題1 次の方程式を解きなさい.
(1) 4x+23=6 (2) 123=2+11x

2. では本論~連立方程式
それではいよいよ今回のメインである連立方程式について復習していきましょう.連立方程式で最も馴染み深いのが2元1次連立方程式,つまり,文字が2つで次数(すぐ下の(注)参照)が1のものです.3文字以上の連立方程式については最後に少しだけふれることにしましょう.
(注) 文字の肩の上に乗っかっている数字を次数といいます.例えば x や y などの次数は1,x2 の次数は2,x3 の次数は3となります.また整式の中で最高の次数を整式の次数といいます.例えば,x2+x+2 は2次式となります.3次以上の式は一般に高次式といわれています.
例題 次の連立方程式を解きなさい.
{3x+2y=8⋯①2x+5y=9⋯②
連立方程式の解き方の基本は1文字ずつ消去です.具体的な方法としては2通りあって,一つは加減法,もう一つは代入法と呼ばれている方法です.順にみていくことにしましょう.
2.1 加減法
2つの式を足したり引いたりしてどちらかの文字を消去します.このとき,どちらかの文字の係数(すぐ下の(注)参照)が一致していないと足したり引いたりしても文字が消えないので,あらかじめ式を掛けたり割ったりして一方の文字の係数をそろえておく必要があります.
(注) 文字の横についている数字を係数といいます.例えば5x2+3x+4では「x2 (2次)の係数は5,x (1次)の係数は3,定数項 (0次)は4」といいます.
手順
・ x を消去する場合
xの係数をそろえておかなければなりませんから,ここでは2と3の最小公倍数(すぐ下の(注)参照)である6にそろえておきます.
(注) 複数の数に共通な倍数を,それらの数の公倍数といい,その中で最も小さいものを最小公倍数といいます.
6x+ 4y=16⋯①×2−) 6x+15y=27⋯②×30−11y=−11 ∴ y=1
y=1を①に代入して
3x+2×1=8∴ 3x=6∴ x=2
よって,
(x,y)=(2,1) ⋯(答)
・ y を消去する場合
15x+10y=40⋯①×5−) 4x+10y=18⋯②×211x+0=22 ∴ x=2
x=2 を①に代入して
3×2+2y=8∴ 2y=2∴ y=1
よって,
(x,y)=(2,1) ⋯(答)
2.2 代入法
代入法ではまずどちらかの文字について解き,それをもう一方の式に代入します.解きやすいほうの文字について解くとよいでしょう.
手順
・ ①を x について解く場合
3x=8−2yx=8−2y3
②に代入して
2×8−2y3+5y=9
両辺を3倍して
2(8−2y)+15y=2716−4y+15y=2711y=11∴ y=1
y=1を①に代入して,x=2.よって
(x,y)=(2,1) ⋯ (答)
・ ①を y について解く場合
2y=8−3xy=8−3x2
②に代入して
2x+5×8−3x2=9
両辺を2倍して
4x+5(8−3x)=184x+40−15x=18−11x=−22∴ x=2
x=2を①に代入して,y=1.よって
(x,y)=(2,1) ⋯ (答)
ここでは①式の x ,または y について解くことから始めましたが,もちろん②式の x ,または y について解き,それを①に代入しても構いません.
演習問題2 次の連立方程式を解きなさい.
(1){2x+3y=83x+2y=7 (2){3x=5yx+y=320

3. 3つ以上文字がある連立方程式
文字が3つ以上ある場合でも,基本方針は文字が2つのときと同じで1文字ずつ消去です.どの文字から消去するかの決まり事はありません.消しやすそうな文字から消去してください.
例題 次の連立方程式を解きなさい.
{x+ y+z=6⋯①x+2y−z=2⋯②4x−y+2z=8⋯③
こたえ 例えば z を消去するとすると
2x+3y=8⋯①+②−) 6x+3y=12⋯②×2+③−4x+ 0=−4 ∴ x=1 よって y=2
x=1,y=2を①に代入して
1+2+z=6z=3
以上により
(x,y,z)=(1,2,3) ⋯ (答)
演習問題3 次の連立方程式を解きなさい.
(1){x+2y+3z=113x+2y−2z=102x−4y+5z=−3
(2){x+y=6y+z=10z+x=8

4. 1次不等式
不等式の扱いはほとんど方程式と同じですが,1つだけ重要な違いがあります.それは,
負の数で掛けたり割ったりしたときだけ不等号の向きが変わる
ということです.従って,不等式の両辺に正の数を足したり引いたり掛けたり割ったりしても不等号の向きが変わらないのはもちろんのこと,負の数を足したり引いたりしても不等号の向きは一切変わりませんので十分注意しましょう.
また,「~以上」「~以下」という表現のときは,不等号の下に「=」を付け,「~より大きい(小さい)」「~未満」という表現のときは不等号の下に何もつけません.
例題 次の不等式を解きなさい.
(1) 4x−1<11 (2) −2x+4≧6
こたえ
(1)
4x−1<11∴ 4x<12
両辺を4で割りますが,4>0なので不等号の向きは変わらず
x<3 ⋯ (答)
(2)
−2x+4≧6∴ −2x≧2
両辺を −2 で割りますが,−2<0 なので不等号の向きが変わって
x≦−1 ⋯ (答)
演習問題4 次の不等式を解きなさい.
(1) 45x+3>1 (2) 12≧−7x−9

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