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高校数学[総目次]

数学Ⅲ 第2章 微分法

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6.媒介変数表示と導関数

6.1 媒介変数表示と導関数

 例として $y=x^2-2x+3$ で表される曲線を $C$ とする.$C$ はおなじみ放物線である.この曲線上の点には

\[(-1,6),\ (0,3),\ (1,2) \]

などがある.ここで,$x$ が $t$ を用いて $x=t+1$ と表されているならば,曲線の式に代入すると $y$ は

\[y=(t+1)^2-2(t+1)+3=t^2+2\]

と表せる.すなわち曲線 $C$ 上の点が

\[\left\{\begin{array}{l} x=t+1\\[5pt] y=t^2+2 \end{array}\right.\ \ \cdots(*)\]

というように $t$ を用いて表せる.先に挙げた $C$ 上の3点はそれぞれ $t=-2,\ -1,\ 0$ における値である.つまり $(*)$ でも同じ曲線を表すことができるのである.

 このように,曲線上の点 $(x,y)$ が, 文字 $t$ を用いて表されるとき,これを媒介変数を $t$ とする曲線の媒介変数表示,あるいはパラメータを $t$ とする曲線のパラメータ表示という.

 上にあげた $(*)$ は曲線 $C$ のパラメータ表示の一例であって,同じ曲線を表すパラメータ表示の仕方は無数にある.極端な例として

\[\left\{\begin{array}{l} x=t\\[5pt] y=t^2-3t+2 \end{array}\right.\]

も一応曲線のパラメータ表示である.

 さて,$(*)$ で $x$ の式を $t$ について解き, $x$ と $y$ の順序を入れ替えて

\[\left\{\begin{array}{l} y=t^2+2\\[5pt] t=x-1 \end{array}\right.\]

と表すと,関数 $y=x^2-2x+3$ はこの2つの関数の合成関数とみなすことができる.このとき,$\dfrac{dy}{dt}=2t$,$\dfrac{dt}{dx}=1$ であるから,合成関数の導関数の公式により

\[\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{dt}\cdot\frac{dt}{dx}=2t\cdot1=2t=2(x-1)\]

となる.当然ながらこの結果は

\[\frac{dy}{dx}=\frac d{dx}(x^2-2x+3)=2x-2\]

と一致する.

 もう少し違う例を見てみよう.

\[\left\{\begin{array}{l} x=t^3+t^2+t\\[5pt] y=t^2 \end{array}\right.\]

 これだと $t$ を $x$ の式で表すのは容易ではないから $y=(x$ の式) の形で表すことは極めて困難である.従って $\dfrac{dy}{dx}$ を従来通り「 $x$ の式を微分する」という方法で求めることはできそうにない.しかし今 $t=(x$ の式) というように表せたとして,$x$ の関数 $y$ を

\[\left\{\begin{array}{l} y=t^2\\[5pt] t=(x\mbox{の式}) \end{array}\right.\]

の合成関数とみなそう.合成関数の導関数により

\[\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{dt}\cdot\frac{dt}{dx}=2t\cdot\frac{dt}{dx}\]

 $\dfrac{dy}{dt}$ の方は $2t$ として解決だが, $\dfrac{dt}{dx}$ の方は $t$ が $x$ の関数として表せないのだから,計算できない.しかし,逆関数の微分法により

\[\frac{dt}{dx}=\frac1{\dfrac{dx}{dt}}=\frac1{3t^2+2t+1}\]

とできるから,結局

\[\frac{dy}{dx}=2t\cdot\frac1{3t^2+2t+1}=\frac{2t}{3t^2+2t+1}\]

となり,$\dfrac{dy}{dx}$ を求めることができた.ただし,これまで $\dfrac{dy}{dx}$ といえば $x$ の式であったが,今回のケースではその表現は望めない.しかし $x$ や $y$ の値から $t$ の値を決めることができるならば,微分係数を上の式から計算することができるのである.

 一般に,曲線上の点 $(x,y)$ が媒介変数(パラメータ) $t$ を用いて \[\left\{\begin{array}{l} x=f(t)\\ y=g(t) \end{array}\right.\ (\alpha\leqq t\leqq\beta)\] のように表されているとき,

\[\begin{align*} \frac{dy}{dx}&=\frac{dy}{dt}\cdot\frac{dt}{dx}\ (\because\mbox{合成関数の導関数})\\[5pt] &=\frac{dy}{dt}\cdot\frac1{\dfrac{dx}{dt}}\ (\because\mbox{逆関数の微分法})\\[5pt] &=\frac{\ \dfrac{dy}{dt}\ }{\dfrac{dx}{dt}}\\[5pt] &=\frac{g'(t)}{f'(t)} \end{align*}\]

と表されるのである.

媒介変数表示の導関数

 $x=f(t),\ y=g(t)$ のとき,

\[ \frac{dy}{dx}=\frac{\ \dfrac{dy}{dt}\ }{\dfrac{dx}{dt}}=\frac{g'(t)}{f'(t)} \]

例題 $x$ の関数 $y$ が,$\left\{\begin{array}{l}x=t+1\\y=t^2\end{array}\right.$ で表されるとき,$x=3$ における微分係数を求めよ.

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